町田市を代表する観光スポットのひとつ「薬師池公園」。
春には梅や桜、初夏には花しょうぶや大賀ハス、秋には紅葉など、四季折々の景色を楽しめる場所として知られています。
現在では多くの人が散策や写真撮影に訪れる薬師池公園ですが、実はこの池、もともと観光のためにつくられた池ではありません。
かつては周辺の農業を支える、とても重要な「ため池」でした。
今回は、普段何気なく見ている薬師池の意外な歴史をご紹介します。
薬師池は昔「福王寺池」と呼ばれていた
現在は「薬師池」と呼ばれていますが、かつては「福王寺池」とも呼ばれていました。
名前の由来となったのは、現在の薬師堂につながる福王寺です。
町田市の資料によると、天正5年(1577年)に北条氏照の印判状が野津田の武藤半六郎にくだり、水田のための用水池として天正18年(1590年)まで開拓されたとされています。
つまり、薬師池の歴史は400年以上前までさかのぼることになります。
今ではきれいな景色を楽しむ場所ですが、当時の人たちにとっては生活や農業を支えるための重要な場所だったのです。
何のために水を貯めていた?
薬師池の水は、周辺に広がっていた水田へ水を供給するために使われていました。
町田市の資料では、約7ヘクタールもの水田の農業用水として利用されていたとされています。
現在のように水道設備が整っていた時代ではありません。
特に雨が少ない時期には、農業に必要な水を確保できるかどうかは非常に重要な問題でした。
そのため、池に水を貯めて必要なときに水田へ供給する「ため池」が、地域の農業を支えていたのです。
実は何度もピンチを迎えている
400年以上残っている薬師池ですが、ずっと同じ状態だったわけではありません。
宝永5年(1708年)には泥や砂が池にたまり、大塚村・小山村・高ヶ坂村などから人が集まり、約3年間かけて泥砂を取り除いたとされています。
さらに文化14年(1817年)にも池が再び泥砂で埋まり、十分な水を確保できない状態になりました。
そこで、干ばつに苦しんでいた水田へ水を供給するため、再び池を掘り直す工事が行われました。
今では静かで穏やかな薬師池ですが、昔の人たちにとっては「この池の水があるかどうか」が農業に直結するほど大切な存在だったわけです。
なぜ現在の「薬師池公園」になった?
時代が進み、町田市周辺でも宅地化が進んでいきます。
それに伴って、薬師池が農業用のため池として果たしていた役割も徐々に小さくなっていきました。
その後、池だけでなく周辺の谷戸や斜面なども含めて整備が進められ、1976年に「薬師池公園」として開園しました。
つまり、
「観光のために池をつくった」
のではなく、
「もともと地域の農業を支えていた池を中心に、現在の公園が整備された」
という歴史があります。
今でも昔の町田を感じられる場所
薬師池公園が面白いのは、単に池が残っているだけではありません。
園内には昔の農村の暮らしを感じられる建物も保存されています。
そのひとつが「旧永井家住宅」です。
もともとは町田市小野路町にあった農家で、17世紀後半に建てられたとされる古民家です。
現在は国の重要文化財に指定され、薬師池公園内へ移築されています。
ほかにも、江戸時代末期に医院兼住宅として建てられた「旧荻野家住宅」も移築されています。
薬師池を見るだけでなく、こうした建物にも注目すると、昔の町田の暮らしをより身近に感じられます。
今では町田市を代表するスポットに
農業用のため池だった薬師池は、現在では町田市を代表する公園になっています。
1982年には「新東京百景」、1998年には「東京都指定名勝」、2007年には「日本の歴史公園100選」に選ばれています。
梅・桜・花しょうぶ・大賀ハス・紅葉など季節によって景色が変わるため、一年を通して楽しめるのも薬師池公園の魅力です。
昔の人が農業のために守ってきた池が、400年以上の時を経て、現在は多くの人が訪れる場所になっていると考えると面白いですね。
まとめ|いつもの薬師池も歴史を知ると見え方が変わる
現在の薬師池公園を見ると、最初から公園や観光地としてつくられたようにも見えます。
しかし、その始まりは周辺の水田へ水を供給するための「ため池」でした。
何度も泥や砂に埋まりながら、そのたびに地域の人たちによって整備され、農業を支えてきた歴史があります。
そして農業用水としての役割が小さくなったあとも池は残され、現在の薬師池公園へと姿を変えていきました。
普段から薬師池公園へ行っている町田市民の方でも、こうした歴史は意外と知らなかったのではないでしょうか?
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